「まさか、こんなことになるなんて…」。朝、いつも通り玄関を開け、見慣れた我が家の前の「道」を見た時、私の心臓は凍りついた。隣人の借金が原因で、その「道」の一部、つまり位置指定道路の共有持分が、全く見知らぬ債権回収会社に渡ってしまったという通知。青天の霹靂とはこのことだ。
「この道は、私たちみんなのものだと思っていたのに…」。夜中に何度も目が覚め、天井を見つめる。この先、子どもたちが安心して学校に通えなくなるんじゃないか。宅配便の車が入れなくなるんじゃないか。最悪の場合、家から出入りすることすら妨害されるのではないか。想像するだけで、全身の血の気が引く。胃がキリキリと痛み、食欲も湧かない。隣人との関係もギクシャクし始め、穏やかだった日常は、まるで霧の中に閉ざされたようだ。
「なぜ、こんな理不尽な状況に私が巻き込まれなければならないんだ…」。最初はただの共有道路だから大丈夫だろうと、安易に考えていた。インターネットで「位置指定道路 共有持分」と検索しても、専門用語ばかりで頭に入ってこない。焦るばかりで、具体的な行動に移せない自分に自己嫌悪すら覚えた。「もっと早く、何か手を打っておけばよかったのか？」。しかし、何をどうすればよかったのか、当時の私には全く分からなかった。このままでは、不安の呪縛から一生抜け出せないのではないかという絶望感が、私を深く沈ませていく。もう、どこにも逃げ場がないように感じた。
しかし、立ち止まってはいられない。この見えない不安の正体を突き止め、日常を取り戻すための道筋を探るしかない。位置指定道路の共有持分が債権回収会社に渡ったとしても、あなたの通行権が直ちに奪われるわけではない。民法上、共有持分は確かに財産権であり、担保設定や売買の対象となる。そのため、共有者の一人が借金の返済に窮した場合、担保権が実行され、持分が債権回収会社などの第三者に移転することは法的にあり得る。しかし、位置指定道路はその性質上、不特定多数の通行を目的としている場合が多く、単一の共有者が勝手に通行を妨害することは、法的に容易ではない。とはいえ、債権回収会社は利益追求が目的であり、将来的に持分を売却したり、他の共有者へ高額で買い取りを要求したりするなど、何らかの形で権利を行使してくる可能性は否定できない。この「もしも」が、私たちの不安の根源なのだ。
この状況を乗り越えるためには、まず現状を正確に把握することから始めるべきだ。法務局で登記簿謄本を取得し、誰が、どのくらいの持分を所有しているのか、債権回収会社が本当に共有者になっているのかを確認しよう。次に、他の共有者たちと連携し、この問題にどう対処するかを話し合うことが不可欠だ。一人で抱え込まず、情報を共有し、共通の解決策を探ることで、精神的な負担も軽減される。そして何よりも、専門家である弁護士や司法書士に速やかに相談すること。彼らは、複雑な不動産登記や民法の知識に基づき、あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスを提供してくれる。将来的なトラブルを未然に防ぐための「共有物分割請求」や「共有物不分割特約」の検討、あるいは他の共有者と協力して債権回収会社から持分を買い取る可能性など、複数の選択肢を提示してくれるだろう。
「この不安から、必ず解放されてみせる」。そう心に誓い、一歩を踏み出す。確かに、共有持分を巡るトラブルは複雑で、法的な知識が求められる。しかし、決して「もう手遅れ」ではない。適切な知識と専門家の力を借り、他の共有者と手を取り合うことで、必ずやこの困難を乗り越え、安心できる日常を取り戻すことができるはずだ。あなたの道は、誰にも奪わせない。
